シコルスキーHSS-1/-1Nシーバット『うみつばめ』

《シリアルナンバー》

HSS-1
8551/8558
HSS-1N8561/8569

《実機について》

 大成功を納めたS-55(H-19)のスケールアップ版として、アメリカ海軍の発注で開発されたレシプロ単発対潜哨戒ヘリコプターで、原型機XHSS-1は1954年3月8日に初飛行しました。アメリカでは海軍/海兵隊/陸軍/沿岸警備隊で採用されたほか民間向けS-58も合わせて2,000機以上も生産されました。ライセンス生産はイギリスやフランスでも行われ、日本では三菱重工が組立作業のみを行いました。イギリスではウェセックスの名称で使用されています。
 エンジン装備方法はS-55と同様ですが、キャビン容積の拡大とエンジンのパワーアップにより搭載量にかなりの余裕が生まれました。それでも対潜哨戒機材と魚雷などの攻撃兵器を同時に積むことはできず、それぞれを積んだ2機でハンター/キラー・チームを組む必要がありました。なお、アメリカでは1962年9月のアメリカ3軍呼称統一により、HSS-1はSH-34となりましたが、海上自衛隊では導入時の呼称だったHSS-1をそのまま用いています。

《自衛隊での使用状況》

 海上自衛隊にはまず1958年1月2日から三菱重工(MHI)でノックダウン生産したHSS-1(アメリカ海軍のSH-34Gに相当) 8機が導入されました。次いで1961年からはHSS-1N(アメリカ海軍のSH-34Jに相当) 9機が導入され、1963年までに全機を受領しました。HSS-1NはHSS-1に自動操縦装置やドップラーレーダーなどを装備したモデルで全天候作戦が可能になっています。
 なお本来、HSS-1は下方の主脚柱が1本の"Bent Leg"型主脚柱をもちR1820-84エンジンを搭載(排気管出口はエンジンフード左側面下方)、一方HSS-1Nは下方の主脚柱が2本のV字型でR1820-84Bエンジンを搭載(排気管出口はエンジンフード左側面中央)していますが、MHI製の機体はHSS-1NでもHSS-1と同じR1820-84エンジンを搭載し、HSS-1でもHSS-1Nと同じV字型の主脚柱になっているため、外見からの区別は困難です。
 1964年からはHSS-2と交代を開始し、1975年3月までに全機退役しました。自衛隊での愛称は『うみつばめ』です。

《性能諸元》

HSS-1N
主回転翼直径17.07m,4枚羽根
胴体全幅3.66m
胴体全長14.24m
全高4.85m
キャビン寸法W1.52m×L3.91m×H1.75m
運用重量4,174kg
最大離陸重量5,446kg
発動機ライトR-1820-84
空冷単列星形9気筒×1
出力1,525hp/2,800rpm
燃料容量307gal(機内)
最大速度211km/h(外部搭載なし)
巡航速度145km/h
実用上昇限度12,000ft
海面上昇率1,433ft/min
飛行航続距離443km
乗員4名

《配備部隊》

HSS-1(1957〜1961)
部隊名備考
館山航空隊1961年以降は第21航空群

HSS-1(1961〜1964)
部隊名上位組織
第101航空隊第21航空群
大村航空隊佐世保地方隊
大湊航空隊大湊地方隊
HSS-1は当初は館山航空隊に配備されましたが、1961年の航空集団編成後は第101航空隊の所属となり、HSS-2の配備が始まると大村航空隊と大湊航空隊に移管されました。

HSS-1N
部隊名上位組織
第101航空隊第21航空群
小松島航空隊第21航空群→呉地方隊
大村航空隊佐世保地方隊
HSS-1Nは当初は第101航空隊に配備されましたが、1964年にHSS-2の配備が開始されると小松島航空隊と大村航空隊に移管されました。

《キット》

1/48ギャラリーモデルUH-34D
2015年6月発売。下記モノクローム(トランペッター)のキットのバリエーションでいちおう海自デカール入り。エンジンフードと主脚のパーツは2種類入っています。
モノクロームHSS-1N
2013年1月発売で中身はトランペッター製。海外では MRC/ギャラリーモデルのブランドで販売されています。キットは純粋にHSS-1Nを再現しているためそのままでは海自型にできませんが、なぜか排気管出口が下方にあるエンジンフードが不要パーツにあるので、それが使えれば海自型にできるかもしれません。てかバリエーション展開ありそう。↑ありました。(^^;)
イタレリH-34G.III
/UH-34J
2016年発売。2012年に発売されたウェセックスHU.5のバリエーションです。UH-34JはSH-34J(=HSS-1N)から対潜装備を降ろした輸送/汎用型なので。HSS-1Nにするにはちょろっと改造が必要な気がします。
1/72タミヤHSS-1N
ウォーバードシリーズ。イタレリのH-34にパーツを追加し新たなデカールを入れて海上自衛隊のHSS-1Nとしたものです。
1/87アーセナルMSH-34GAIRPOWER87シリーズ。西ドイツ海軍のSH-34G(=HSS-1)ですが、webの完成見本はけっこういい出来に見えます。
1/144 Mark I モデルズHSS-1N[2022年発売予定?]チェコ製のインジェクションキット。デカールの「海上自衛隊」の文字はほぼ正確で、時期によるフォントの違いまでフォローしてるくらいなので期待が持てます。
FEレジンHSS-1Nチェコ製のレジンキット。ブランドが違うだけで中身はほぼ同じです。HSS-1NのほうはH-34のキットそのままですが海上自衛隊デカールが入っています。入手は困難。
H-34
ミニウイングHSS-1N
1/350 ハセガワS-58『南極観測船 宗谷 第3次南極観測隊』のキットに搭載機として入っています。
ラーセナルウェセックス胴体はレジン製でモールドも何もありませんが、ローターはエッチングでシャープな出来です。
ホワイトエンサイン
モデル
ウェセックス
1/700 シールズモデルS-58南極観測船「宗谷」のキットに搭載機として入っています。
ラーセナルウェセックス胴体はレジン製、ローター、水平安定板、主脚はエッチングパーツです。
ホワイトエンサイン
モデル
S-58胴体はレジン製でモールドも何もありませんが、ローターはエッチングでシャープな出来です。
フジミウェセックスシーウェイモデルシリーズの「イギリス空母艦載機セット」に入っています。
ドラゴンUH-34J米海軍強襲揚陸艦「LPH-4ボクサー」のキットに搭載機として入っています。

《デカール》

1/48 ギャラリーモデルキット付属HSS-1N機番のみ
1/72 タミヤキット付属HSS-1N小松島航空隊[第21航空群]
機体はHSS-1なのにシリアルはHSS-1Nのもので、部隊記号が「コ」ではなく「J」になってしまっているので注意が必要です。
1/144 Mark I モデルズキット付属
[2022年発売予定?]
HSS-1N 第101航空隊[第21航空群]
大村航空隊[佐世保地方隊]
FEレジンキット付属HSS-1N小松島航空隊[第21航空群]
ミニウイングキット付属HSS-1N小松島航空隊[第21航空群]
FEレジンとミニウイングのキットは、どちらも機体はH-34(S-58)なのにシリアルはHSS-1Nのものになってます。小さいので改造はそんなに難しくはないでせう。どちらもデカール作成は日本のYKraftが行っていますので、漢字については安心です(笑)。

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