ホーカー・ビーチクラフトTC/LC-90キングエア,
            UC-90キングエア『くにかぜII』

《シリアルナンバー》

TC-90 モデルC906801/6811
モデルC90-1
6812/6818
モデルC90A6819/6822
モデルC90SE
6823/6834
モデルC90GT
6835/6836
モデルC90GTi6837/68412014年3月現在
LC-90モデルC90A
9301/9305
UC-90モデルC90-1
9102

《実機について》

 ルーツはビーチクラフト社のレシプロ双発ビジネス機モデル50ツインボナンザで、原型は1949年11月15日に初飛行しています。その後胴体を新設計したモデル65、エンジンをパワーアップしたモデル80、エンジンをターボプロップ双発にし胴体を与圧構造にしたモデル90へと発展してきました。モデル90の初飛行は1963年5月15日でモデル90、A90、B90、C90、E90、C90-1、C90A、C90B、C90SE、C90GT、C90GTiと発展しつつ現在も生産が続けられています。C90はスパンを1.34m延長(B90以降)しエンジンをPT6A-20A(550shp)に強化したモデル、C90-1は与圧を強化して全備重量を増加させたモデル、C90Aは空気流入率を向上させた“ピトー・カウリング”と呼ばれるエンジンカウリングを装備したモデル、C90Bは4翅プロペラ、自動操縦装置、気象レーダーなどを装備しコクピット計器盤が電子飛行計器システム(EFIS=Electronic Flight Instrument System)となった近代化改修型、C90SEはC90Bの廉価版(3翅プロペラ、EFISを含まない標準的なアナログ計器など)、C90GTはエンジンをPT6A-135(750shp)に強化したモデル(プロペラは4翅)で、2008年12月以降生産されているC90GTiはC90GTのアビオニクスを強化しEFISを採用したモデルです。

 なお、ビーチクラフト社は1980年にレイセオン社の子会社となり、1994年9月にはレイセオン・コーポレート・ジェッツ社(1993年8月にレイセオン社に買収された、元BAe社コーポレートジェット部門)と合併してレイセオン・エアクラフト社となりました。その後2007年にレイセオン・エアクラフト社は売却されホーカー・ビーチクラフト社として再編されています。

《自衛隊での使用状況》

 海上自衛隊ではB65の後継機としてモデル90をTC-90として採用、1974年に導入を開始し航法訓練機として運用しています。2014年3月現在の納入数はモデルC90/C90-1/C90A/C90SE/C90GT/C90GTi合わせて41機で、これより新しいシリアルナンバーの機体が確認できないため、これで納入は終了したのかもしれません。よく判らないんですが。(^^ゞ

 なお、2011年3月11日に発生した東日本大震災により仙台空港が津波で水没し、整備のため同空港にあるジャムコ仙台事業所に置かれていた#6823と#6828が被災、全損しました。このため2011年度の東日本大震災復旧・復興関連補正予算で代替機1機が調達され、2013年度中に納入(#6841)されました。

 2016年9月には日本とフィリピンとの首脳会談において、最大5機のTC-90の機体と関連器材、技術情報のフィリピンへの移転(貸与)が合意されました。これを受けて2017年3月23日にまず#6822と#6824の2機が徳島航空基地を発ち、27日にフィリピンのヘラクレオ・アラノ・サングレーポイント海軍基地に於いてフィリピン海軍主催の引き渡し式典が開催されました。残り3機も2017年度中に引き渡される予定です。

 LC-90はTC-90(C90A)の訓練用機材を外したモデルで、連絡機として1988年から5機が導入されています。

 UC-90『くにかぜII』は、国土地理院から委託運航されていたB65P『くにかぜ』の後継機としてTC-90(C90-1)の仕様を改めた航空測量機です。1983年に1機が導入されB65Pと同様に委託運航されていましたが、2010年3月4日付けで退役しました。後継機はセスナ208キャラバン「くにかぜIII」で、運航は国土地理院が民間に委託して行います。

《性能諸元》

TC-90(モデルC90)
全幅15.32m
全長10.82m
全高4.33m
主翼面積27.30u
運用重量2,532kg
最大離陸重量4,377kg
発動機プラット&ホイットニー・カナダPT6A-20
ターボプロップ×2
出力550shp(1基)
プロペラハーツェル
直径2.36m/3枚羽根
燃料容量384gal(機内)
最大速度435km/h
巡航速度402km/h
実用上昇限度25,600ft
海面上昇率2,000ft/min
飛行航続距離2,327km(最大)
乗員2名+キャビン7名

《配備部隊》

TC-90
部隊名上位組織
第51航空隊航空集団直轄
第202教育航空隊徳島教育航空群
導入当初は第51航空隊で運用試験が行われたあと、ほぼ全機が第202教育航空隊に配備されています。

LC-90
部隊名上位組織
第1航空隊第1航空群
第2航空隊第2航空群
第61航空隊航空集団直轄
第81航空隊第31航空群
第91航空隊
第2航空隊の機体は1995年4月に退役しています。また第81航空隊の機体は2001年3月5日に新編された第91航空隊に移管されました。

UC-90
部隊名上位組織
第51航空隊航空集団直轄
第202教育航空隊徳島教育航空群
導入当初は第51航空隊で運用試験を実施した後、第202教育航空隊に異動しています。ここに配備されていたのは整備補給上の理由からで、訓練に使用されていたわけではありません。

《部隊マーク》

第61航空隊
制定不明(1994年12月頃)
図柄コールサインの「Caravan」を青、それにちなむラクダのイラストをオレンジで描いたマーク
記入位置乗降ドア直後の胴体側面
その他の航空隊は部隊マークを使用していません。

《キット》

1/72 赤とんぼワークスTC-90
2010年夏に発売された、我が友人の手になるオリジナルレジンキット。モデルC90AであるLC-90とTC-90のコンパチになっています。
LC-90
RVHPTC-90
2016年8月発売のチェコ製のレジンキット。LC/TC/UC-90のコンパチになっていて、エンジンカウリングの違いもきちんとパーツを分けています。
LC-90
UC-90

《デカール》

1/72赤とんぼワークスキット付属TC-90第202教育航空隊[徳島教育航空群]
LC-90第61航空隊
RVHPキット付属TC-90第202教育航空隊[徳島教育航空群]
UC-90第202教育航空隊[徳島教育航空群]
LC-90第61航空隊
「海上自衛隊」の文字は使えそうですが、UC-90の「くにかぜII」の文字は『いったい何を見たらそんな平仮名になるんだ?』的なものになっちゃってます。(^^;)

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