ハッピー・バレンタイン(2001年2月8日)

 世間的にはあと1週間でバレンタインデーという日がやってくる。まぁなんとゆーか、世の男どもにはなんとも落ち着かない日ではある。ワタシなんざほとんど最初からケトばしていたので、まぁどーでもいいのであるが。(T^T)

 しかし、バレンタインデーというと思い出すことがある。このワタシでも明確に人様の役に立ったことがあったのだった。それはもう何年前になるのだらう、前の会社でサラリーマンをしていた頃の話である。


 ワタシが前に勤めていた会社は東京都港区三田の赤羽橋近くのビルにあった。普段はもちろん電車通勤をしていたわけであるが、仕事の都合でごくごく稀にではあるがクルマで行くこともあった。もちろん駐めるのは一般の有料駐車場である。バレンタインデーであったその日もたまたまクルマで行った日であった。

 定時が過ぎた頃、ワタシが所属していた部の部屋にMさんが遊びにきた。彼女はワタシより2年くらい早く入社していた先輩であったが、その時はすでに会社を辞めており、とある生命保険会社の外交員をしていた。であるが、その日の訪問目的は保険の勧誘などではなく(前の会社には別の生命保険会社がガッチリ食い込んでおり、とてもよその社が入れる余地はなかった)、立ち寄り先で余った義理チョコをばらまきに来たのだった(笑)。

 しばらくはチョコなどつまみつつ談笑していたのであるが、ふと彼女が時計を気にするような仕草をすることに気がついた。
「あれ、どうしたんですか?日が日だけにデートですか?」
と聞いてみると、
「うーん、そうなんだけど、でもいいの。なんかもうダメかもしれないし」
となんか悲しげなことを言う。聞くとはなしに聞いてみると、どうも彼氏との間がしっくりいっていないらしい。
「なに言ってんですか、もったいない。まぁとにかく行くだけ行ってみたらどうです?」
と水を向けてみたのだが、
「うん、でももう間に合いそうにないし」
と半ば諦めモード。
「待ち合わせはどこなんですか?」
「六本木なの」
 地下鉄大江戸線がある現在なら、赤羽橋から六本木まではすぐである。しかし当時は同じ港区内でも三田から六本木に行くのはなかなか時間がかかったのである。彼女の言う待ち合わせ時間まであと30分ちょっと。フツーに電車で行ったのでは間に合わない(そもそも赤羽橋のビルから最寄りのJR田町駅まで徒歩10分かかる)。タクシーを使えば間に合うかもしれないが、タクシーを呼んでから来るまでの時間もかかるし、だいいち彼女にそこまでする気はなさそうである。

 まぁ本人がそう言うのならしょうがないかなぁ、とか思いつつそろそろ帰ろうかと思ったその時ワタシはふと考えた。今日ワタシはクルマで来ている。帰りには広尾を通る。広尾から六本木までは地下鉄日比谷線でひと駅である。今からクルマで出れば間に合うかもしれない・・・。

 ここでこう思う人がいるかも知れない。なぜ六本木まで乗せて行かないのか、と。天使のKWATはこう言う。これから彼氏に会うという女性を待ち合わせ場所近くまで乗せていったなら、もしその光景をその彼氏が見てしまった場合どんな修羅場が展開されるか、想像するだに恐ろしいからである。一方、悪魔のKWATはこう言うだらう。他人の彼女にそこまで優しくするほどお人好しではない、と。(。_゚)))☆C= バキッ!

 まぁともかく、そこでワタシはMさんに言った。
「ワタシ今日クルマなんですよ。で、そろそろ帰りますけど、帰りに広尾を通るのでそこまで乗って行きません?そこから六本木は地下鉄でひと駅です。間に合うかもしれませんよ」
「うーん、そうね、それで間に合わなかったらそれもしようがないかもね」
 というわけで、ワタシは彼女をクルマに乗せ、広尾駅で降ろした後で帰宅したのであった。義理チョコを手に(笑)。

 それからしばらくたった頃、Mさんが結婚するという話が聞こえてきた。そしてある日、再び遊びに来たMさんがワタシをつかまえてこう言った。
「Tくん(ワタシのこと)本当にどうもありがとう。結婚が決まったのはあなたのお陰なの」
「へ?ワタシなんかしましたっけ?」
「うん、彼が言うには、バレンタインのあの日に私が来てくれたから結婚を決意したんだって。Tくんがあの時広尾まで乗せていってくれなかったら私きっと彼に会わなかったと思うの。だからあなたのお陰なの」
「あぁそういうことですか。いやまぁなんか照れますねぇ。とにかくよかったですね。おめでとうございます」

 その後、普段の姿よりずっとキレイなウェディングドレス姿のMさんが写った『結婚しましたハガキ』が届いた。そのハガキをワタシは、少々の晴れがましさと照れくささが混じったなんともほのぼのとした気分で受け取ったのであった。


inserted by FC2 system