大新聞は邪馬台国の夢を見るか?(2001年6月1日)

 2001年5月31日付の読売新聞朝刊は、一面トップでデカデカと邪馬台国は古墳時代「奈良・勝山」築造3世紀初頭』『ヤマト政権と一致か』と報じていた。この問題に関心があるワタシは『すわ、邪馬台国論争に決着か!?』と色めき立ったのだが、よくよく読むともちろんそんなことはなかったわけである。
 読売新聞によるとこの記事の中心は、奈良県桜井市の勝山古墳から出土したヒノキ材を年輪年代法で測定した結果、この古墳は三世紀初めに築かれたわが国最古の古墳であることが判明したと、奈良県立橿原考古学研究所が30日に発表した、というもの。これまでの古墳時代と弥生時代の線引きが変わる可能性がある重大な発見なので、今朝の新聞各紙はみなこの発表を取り上げている。
 この件について、我が家で取っている読売新聞ではさも『邪馬台国論争は畿内説で決まり!』的論調で書かれている。1面では『前方後円墳はヤマト政権の象徴であることから、《邪馬台国畿内説の立場に立てば、》中国の史書「魏志倭人伝(ぎしわじんでん)」から推測される邪馬台国連合とは、次の時代であると考えられていた初期ヤマト政権そのものであった可能性が強まった。(《》内はwebの記事のみ)』『大塚初重・明治大学名誉教授(考古学)の話「科学的な年代の定点が得られ、邪馬台国の時代は古墳時代だったと理解される。邪馬台国が畿内にあったことがはっきりしてきた。土器による年代と整合させることが今後の課題だ」 』と書き、また識者の談話として畿内説の人を3人(うち1人は1面の大塚名誉教授)載せているのに対し九州説は1人しか載せていない。
 しかし、朝日、毎日、産経、日経の各サイトでこの記事を読むと、各社トーンの違いはあれど読売ほど贔屓を鮮明にしているところは他にはない。朝日は『これまで弥生時代とされてきた邪馬台国は古墳時代となりそうだ。』『邪馬台国畿内説がさらに有力になると評価する研究者もいる。』、毎日は『同古墳を含む纒向(まきむく)古墳群を築造した勢力がヤマト政権の源流とされており、卑弥呼時代との一致は邪馬台国大和説を支える第一級の資料といえる。』『一部には卑弥呼の墓との説もある箸墓古墳の築造も、中国の史書「魏志倭人伝」に記された卑弥呼の没年(248年ごろ)と重なる可能性がきわめて大きく、邪馬台国大和説を勢いづかせる。』、産経は『卑弥呼が邪馬台国の女王になって間もない時期に、巨大な前方後円墳がヤマト政権発祥の地・纒向遺跡に発生したことになり、邪馬台国の所在地をめぐる論議に大きな史料を提供した。』、日経は『今回の調査結果は、前方後円墳の登場で始まったとされる古墳時代の年代観の見直しを迫るとともに、邪馬台国論争にも一石を投じそうだ。』という調子で、毎日がやや畿内説有利的論調ではあるがどこも『邪馬台国は畿内にあった可能性が高まった』などとは書いていない。
 それもそのはずである。橿原考古学研究所の発表内容をさらによく読むと、肝心な点は勝山古墳から出土したヒノキ材の建築部材10点のうちの1点(長さ41cm、幅26cm、厚さ2.5cm)が、199年プラス12年以内(なぜか読売は203年〜211年、日経は198年〜211年としている)に伐採されたことが明らかになった、というところだけである。出土の状況や部材そのものの状況などから勝山古墳も同年代に築造されたと判断できるという。つまり、ここから推測できることは『勝山古墳は邪馬台国と同じ時代に築造されたらしい』ということくらいであり、当時の日本列島に人間が居たのは邪馬台国だけ、とかいうならともかく(まずあり得ない(笑))、これをもって邪馬台国は畿内にあった、などとは決して言えないハズなのである。しかも、勝山古墳から木製品と同時に出土した土器は従来の研究によれば3世紀後半ごろと推定される型式に分類されるので、今回の発表をもってして勝山古墳の築造年代を決定できるわけではないのである。
 ではなぜ読売はあんな調子の記事を載せたのであらうか。もちろん真相は知りようがないが、少なくとも社内的には邪馬台国畿内説が優勢なのであらう。さもありなん、という気もするが(笑)。しかし、あれではこの問題に関心のない一般読者は『邪馬台国は奈良にあったらしいねぇ』と思ってしまいそうである。ミスリードというほど大きな問題ではないが、もう少し公平な記事を望みたいところである。居酒屋の酒飲み話程度にこの問題に関心のあるワタシは、この記事を見て正直言ってちょっと焦ったのであった。(^。^;)ヨホホホ
 ところで、読売では畿内説支持を鮮明に語っていた大塚初重・明治大学名誉教授であるが、朝日ではなぜかそんなことは一言も語っていない。なんでかな〜? やっぱ朝日だからかな〜? あるいはホントは激しく語っていたのにカットされたとか?ヘ(^o^ヘ)(ノ^o^)ノ


inserted by FC2 system