2-2.有機溶剤による障害の起こり方
有機溶剤による障害の起こり方には、次のようなものがあります。 2-2-1.付着・吸収2-2-1-1.皮膚・眼への付着・吸収 ほとんどすべての有機溶剤は皮膚障害を起こします。有機溶剤は皮膚から吸収され、溶けこんだ部位では皮膚の痛み、紅斑、水疱などがみられます。また、有機溶剤が眼に入ると、流涙、充血、眼痛などを起こします。吸収された有機溶剤は毛細血管から血液中に入ります。
なお、水や油に溶解しやすい有害物ほど一般に皮膚からの吸収が大きいといえます。また皮膚に傷があったり皮膚病があれば、それだけ吸収されやすくなります。
皮膚から吸収されるものとして特に注意すべき有機溶剤には、次のものが挙げられます。
2-2-1-2.呼吸器からの吸入・吸収有機溶剤のガスまたは蒸気を吸入すると、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支および肺胞管などを通過しますが強い刺激はありません。しかし、肺胞内で血液中に酸素を取り入れる際に、有機溶剤も一緒に体内に吸収されます。 2-2-1-3.消化器からの吸収飲み込まれてしまった有害物は胃腸から血液の中に入り、いったん肝臓にゆき、そこで解毒されますが、肝臓機能が低下している場合や、肝臓の解毒能力を超えるほどの大量の有機溶剤が吸収された場合には、有機溶剤は血液中に流れ込んでいきます。 2-2-2.循環吸収された有機溶剤は血液とともに体内を循環します。そして特殊な臓器(中枢神経)に作用して、急性の障害を起こすものがあります。 2-2-2-1.麻酔有機溶剤の多くは中枢神経に作用し意識を消失させます。特にエチルエーテル、クロロホルムおよびトリクロルエチレンは吸入麻酔剤として使用されます。その他ケトン、アルコールなどを吸入すると意識がボンヤリして失神します。 2-2-3.体内蓄積吸収された有機溶剤は、体内に一様に同じ濃度で蓄積されるものではなく、有機溶剤の種類によって蓄積される場所が違います。 2-2-3-1.神経障害 中枢神経系の症状として頭痛、めまい、記憶力低下、視力低下、失調症状、手指のふるえ、失神、精神神経症状(不安・短気・焦燥感・不眠・無気力など)があり、脳波、眼科的所見、精神医学的検査が有用です。トルエンでは、シンナー遊びで失神し死に至ることがあります。
末梢神経系として、四肢のしびれ、痛み、萎縮、筋力低下などがありますが、ノルマルヘキサンでは多発性神経炎がみられます。筋電図末梢神経伝導速度、定量的振動覚測定などが有用です。
自律神経系では、循環系のものとして失神、立ちくらみ、異常発汗、冷え症など。消化器系として便秘、悪心、心窩部痛、食欲不振、胃の症状、下肢のけん怠などがあります。
《神経障害を起こす有機溶剤》
2-2-3-2.造血障害《貧血を起こす有機溶剤》トルエン、キシレン、ノルマルヘキサンは軽い貧血を起こすといわれています。その他ガソリン類にもその作用があるとみられています。これは混在するベンゼンによるものとされています。 2-2-3-3.肝障害尿中ウロビリノーゲン陽性、黄疸がみられます。肝臓は初め肥大しますが、後には萎縮します。 《肝障害を起こす有機溶剤》 肝機能検査を必要とするもの(医師が必要と認めたとき)
2-2-3-4.腎障害尿中蛋白陽性となります。 《腎障害を起こす有機溶剤》 腎機能検査を必要とするもの(医師が必要と認めたとき)
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