2-4.応急措置
- 救助
- 無防護で飛び込んではいけません。防毒マスク、空気呼吸器などを着用して救助に向かってください(『2-5-2.呼吸用保護具』の項も参照のこと)。
- 事故現場の換気を充分に行ってください。有機溶剤は引火性や爆発性の高いものが多いため、暗い場所での救助では必ず懐中電灯を用い、決してマッチ、裸火などを使用しないでください。
- 処置
- 中毒を起こした人(以後「被災者」)を風通しのよいところに運び、頭を低くして、横向き、または仰向けに寝かせてください。
- 衣服を緩めてください。
- 意識を失なっている場合は、口の中の異物を取り除いてください。
- 呼吸が停止している場合は、速やかに人工呼吸を行ってください。
被災者の呼吸が停止していたり、心臓が停止している場合は、救急蘇生を行うとともに、医師の診察を受けることが必要です。
救急蘇生は、直ちに始めることが最も大切で、呼吸あるいは心臓が停止して3分以内に、人工呼吸、心マッサージを始めなければなりません。6分以上たってしまうと、たとえ蘇生したとしても、意識が回復しないこともありますので、いたずらに時間を空費しないことです。
熟練者を呼んでくるうちに3分くらいはすぐにたってしまいますし、また医師が来るのを手をこまねいて待っているだけでは、被災者を見殺しにすることにもなりかねません。
ここでは、救急蘇生法の中で最も重要な呼吸蘇生法と心マッサージ法について解説します。
意識不明になると舌が沈下して気道を塞いだり、呼吸を調節することもできなくなってしまいますので、そのまま放置すると窒息死するおそれがあります。
そこで人工呼吸法を実施するに当たっては、まず気道を確保することから始めます。
《気道の確保》
- 口を固く閉じていたり舌が奥へ落ち込んでいる場合には、口を開き、舌を引っ張り出して、広い布または2本の箸で舌をはさんで口の外に出してください。
- 仰向けの人工呼吸では、肩の所に枕を入れ(約15cmくらいの高さ)、後頭部を後ろへ引き、同時に下顎を前に引っ張り出すようにすれば、気道が開きます。
- 口の中に吐物、唾液等がある場合は、ガーゼや脱脂綿等で拭いてあげてください。
- 義歯等があれば、外しておいてください。
1)呼気蘇生法(口対口法)
この方法は、呼吸量が器械を用いない人工呼吸法のうちで最も大きなものです。普通胸がふくらむ程度、大人800〜1,200mlくらいとし、普通呼吸の約2倍を目安に1回1回吹き込んでください。その実施方法は次のとおりです。
- 蘇生法を行う者(以後「施術者」)は被災者の鼻を指でつまんでふさぎ新鮮な空気を吸い込んで、被災者の口に施術者の口を密着させ、呼気を吹き込んでください。この時施術者は、被災者の胸がふくらむのを横目で見て確かめてください。
- 吹き込み終えたら直ちに口を離し被災者の胸がしぼむのを待ちます。この際被災者の呼気を吸わないように注意してください。
- 吹き込み量が多すぎたり、後頭部を後ろに引いて気道が開くような処置を怠った時に、胃に空気が入るとブルブルというような音が聞こえ、みぞおちのところがふくらんできます。このような時は、吹き込む強さを弱くします。胃の内容物が逆流してきた時は、肺に吹き込まないよう、一時顔を横に向け、口の中をきれいにしてあげてください。
- 被災者が歯をくいしばり口が開かない時は、鼻孔から吹き込みます。
- この動作は、最初は4回連続して吹き込み、その後は大人5秒に1回の割で毎分10〜20回吹き込みます。また吹き込みの合間に頚動脈に触れ、脈の確認をしてください。
- 口と口と直接つけるのがいやな場合は、手拭いかタオルを介して吹き込むこともできます。ただし、織目のつまったハンカチなどは空気の通りが悪いので、施術者も疲れますし、効果も減ってしまいます。
2)心マッサージ法
心臓の鼓動が止まっていれば、いくら人工呼吸をしても意味がありません。また胸骨圧迫心マッサージは、被災者を仰向けにして、下の堅い平らなところに寝かせて行うことが必要で、布団やマットレスの上では効果がありません。
- 施術者は被災者の左側(もしくは右側)に両膝または片膝をついて、胸骨の全体の1/2をまず測り、その下半分のさらに1/2のところ(胸骨の下1/4…胸骨体の先端から約2.5〜3.75cm(体格によって多少異なります))に掌尾の中心がくるように、両手を重ねてあてます。下の手は、手のひらの中央から指先のほうはやや上げて宙に浮かせます。
- 施術者の両肘を充分伸ばして、胸骨に対して手首と肩とが垂直になるようにして、施術者は体重を使って(約40kgかけます)胸骨を真下に向かって(大人の場合で4〜5cm沈下)力を加えます。
次に力を抜き、また圧迫するという動作を、大人の場合1分間に60〜80回のペースで続けます。また力を抜いた時、掌尾は胸骨体から絶対に離したり、移動してりしてはいけません。
- 心停止が起こっていないのに間違って不適当な心マッサージをすれば副作用を伴うこともあります。たとえば手の置き方が悪かったり圧迫が強すぎたりしたため肋骨を折ることもあります。
本法の実施はできれば医療技術者および特別の救急蘇生法教育を受けた人にとどめるようにしてください。また実際に力を加える実習は人形を使用してください。
3)人工呼吸と心マッサージとの組合わせ実施
心マッサージを続けて人工呼吸を2回連続などの組合わせで医師が来るまで続けてください。
- 直ちに多量の水道水で約2〜3分間よく洗ってください。
- 手に入るなら3%硼酸水でよく洗ってください。
- 特に痛む場合や充血のひどい場合は医師の治療を受けてください。
模型製作はたいていの場合一人でこつこつとするものです(一人淋しく、の場合もあるでせうが(^_^;))。人工呼吸とか心マッサージなどは自分が自分に行うわけにはいきませんから、同居している家族とかがいる場合には誰かに心得ていてもらうと、いざという時に役立つかもしれません。もっとも、模型製作に使うくらいの量の有機溶剤では、『2-3.予防措置』で解説した措置(特に換気)をきちんと行っていれば、急性中毒になるようなことはまずないといってもいいでせう。
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